ユウコさんは今日も不安の中で1日を終えました。夜勤の兄ちゃんを傍にして。
あるスタッフが言いました。
「ユウコさんがいるテーブルに花も飾れない‼️取って行くから❗」
「動き回るユウコさんをみるのは職員のストレス」
確かにテーブルに置いてあるものを懐に入れてしまいます。
なぜ?皆さんは考えたことがありますか?
彼女の部屋は入所当初の私物が徐々になくなりました。
認知症による混乱の中、物を壊してしまいます。使い方がわからない…
「…これ、どうするの?」「…これは何?」
スタッフは「危ない」を理由に取り上げていった。
彼女はいつもいつも訴えます。
「…取って這ってった‼️」「ここにはなんもなか‼️」
何もないテーブルを前にじっと座らせられて不安は募るばかりです。
テーブルの上にたくさんの物を広げると、彼女は丁寧に片付けはじめます。
「…あら~きれかね~」「…あんた、上手かねぇ、私はできんもんねぇ」
たくさん目の前にものが溢れていると彼女は取って懐に入れようとはしません。取ったとしてもわずかです。
入居者様の中には、どうしても上手く食事をお口に運べずこぼしてしまわれる方がおられます。
介護の世界には「食事用エプロン」というものがあります。誰が考えたのやら…
このエプロンを皆さんは自分の首に付けたことがありますか?
多くが防水だから冷たい。一晩外に干されたエプロンは冷えきってます。
首にはおっきな血管、頸動脈が通ってます。そこに冷たいエプロンを巻かれると血管は身体を冷やさないように縮こまります。
皆さんは寒いとき首にマフラーやスカーフを巻きませんか?タオル一枚でもいい、巻いたら暖かいですよね。そこに冷たいエプロン…冷たい、寒い…中には血圧が上がるかも…
皆さんは「トロミ」をしってますか?水分をドロドロにして嚥下を助けます。飲んだことがありますか?
自分の好きな飲み物がドロドロだったらどうでしょ?
加齢とともに嚥下機能が低下し食べ物、飲み物が食道ではなく、間違って気管にはいり、誤嚥性肺炎を起こします。
誤嚥性肺炎予防にトロミを付けます。
しかし、トロミを付ける前に誤嚥性肺炎予防はないのか。
食事の前の口腔ケア体操。首、肩をストレッチ、口の動きを良くするストレッチ、唾液をたくさん出してお口の中を潤し食べ物がスムーズに食道へ流れるように助けます。
口腔ケア体操が始まるとリーダーさんに合わせて体操が始まります。出来る方、出来ない方…全て出来なくても良い…せめて唾液がたくさん出たら…
入居者様のほとんどが紙パンツ、尿とりパットを使用しています。
加齢ともにおしっこが漏れてしまいます。トイレまで間に合わない…尿意、便意が失くなることもあります。
紙パンツも尿とりパットもコワゴワして気持ちが良いものではありません。
ユウコさんのものがなくなる生活
エプロンを首に巻かれ摂る食事
ドロドロの飲み物にパブロフの犬のように決まって食事の前に始まる口腔ケア体操
どれも介護のプロの根拠?都合で当たり前のように行われています。
今さら…でもこのままで良いのだろうか?
コロナ禍でたくさんの情報が溢れている。何が正しいのか。どうするのがベスト?私たちは常にベストはなにか?何がただしい?と考えねばならない。
介護も同じ、私達の、介護のプロの都合で物事を進めて良いのだろうか?プロのすることに間違いはない?
ユウコさんは時に、爪をたて、叩いて私たちの「介護」に抵抗します。
スタッフの腕や手には傷やあざが残ることも…しかし、それはユウコさんの悲しみであり、苦しみ、叫び…
医療も介護も日々変化し進んでいく…何より私たちがお手伝いする方々ひとりひとり違う…私たち自身が違うように。
私だったら…どうだろう…
自分がされて嫌なことは人にしちゃダメ…自分が嬉しい、気持ち良いと思うことをしなきゃダメ。
子供の頃に教えられた言葉は今も大切にしたい…
…今夜も夜勤の兄ちゃんありがとう…ユウコさんは兄ちゃんの傍に居てくれる安堵感と少々の薬の力を借りて眠りにつくことができました。