キミエさん、グループホームに入所されて10日になります。
まだ1度もお風呂に入っていません。
「家に帰してください。」
「仏さんのあるとにだいが毎日まいるとですか!」
「毎日、ご飯、お茶、お線香をあげよりました。これからだいがあぐっとですか!」
おっしゃる通り。
仏様はくらい家でカビていく…
ハンガーストライキ、玄関から動かない…
困りましたね。スタッフは参っていることでしょうね。
失礼…私がお連れしました…他人事ではいけませんね。
環境の変化は大いに周辺症状を招きます。
何故?
認知症だから…という回答はプロの回答ではありませんね。
認知症による短期記憶障害。
①何故グループホームにいなければならないかわからない。説明しても短期記憶障害で忘れてしまう。
②今まで自宅でご本人様にとって毎日の生活を難なくこなしていた…と思っている。他者の忠告はお節介でしかない。
③養豚業で頑張ってきた。子どももりっぱに育てあげ、立派な家に養豚場。きばった人生の道のりは彼女の認知症の受容に勝る。
今日私と2回目の帰宅。
前回同様必死に肌見放さないバッグ中を探します。
私も先日USBを入れたピルケースが無くなったときバッグの中を必死に探しました。
頭の中は無くなったら…あのデータ、このデータ…諸々書式、諸々文書、写真…
今すべき仕事がまずできない…えっ!いちからデータ作りかよ…
これまでが詰まっているのに…
あっ!もしかして仕事を辞めろと神様の思し召し?と探す手が止まった…
とここまでは私のこと。
しかし、認知症で短期記憶障害をもつキミエさんも同じなんです。
私はUSBごときですが、キミエさんにとっては長年生活した立派な家。
そこには数十年の人生が詰まってます。
その自分の家に入れない。
入れないならよーわからんグループホームとやらに戻らねばならない。
会ったこともない人たち。しかも、その人たちはやたらお節介、更には人は毎日変わる…
すんません…すみません…あんたに世話になってすんません。
すみませんと謝るキミエさんは別のところでなんで帰してくれないとイライラ。
要領のわからないグループホームとやらの生活に戸惑い皆との食事も気が引ける。
ましてやお風呂なんて…とんでもなかー❗
この混乱を私たちはどれだけ理解しているだろうか。
毎日、毎日不安で夜は一人ぼっちで夜を明かさねばならない。
今日、お伺いした新規の入居者様ご家族とお母様の認知症について伺いました。
昔から住み慣れた家を取り壊し、新築した家にすみ始めた頃から認知症が発症したのではなかったかとお母様のことを振り返りました。
更に、昔の家にあった古い家財は処分、使い慣れたものの多くが処分された。
その方にとっては勝手のわかった家、目をつぶっても移動できたに違いない住み慣れた家。
環境の変化が認知症の引き金になったのではと。
しかし、認知症を治すことは今の医療ではできない。
ならば、用意された自宅でない「場所」を受け入れるしかない。
私たちは自宅でない「場所」での生活を支えねばなりません。
必死に鍵を探すキミエさんの心を理解しているだろうか、居ても立っても居られない心を理解しているだろうか…
「家より命が大切でしょー!」と叱責するご家族の声。
今のキミエさんにとって本当にそうだろうか…
グループホームにいることが命を守ることと直結させることができるだろうか…
いや、できないどころか、今のキミエさんにとっては命より大事な家なのかもしれない。
人の喜び、痛み、悲しみ、苦しみを、我がことのように共感できる人財を目指したい、目指して欲しい。(スタッフ教育方針)
なせるならば、きっと私たちはキミエさんの残りの人生の支えになれるはずと思うのです。
このお顔、GETできましたねー。
この笑顔を毎日積み重ねてください。
キミエさんのほっこりした感情記憶が不安な感情記憶に優れば、グループホームと私たちを受け入れてくれるに違いない。
今夜、桜花さんが夕食後、お風呂をお勧めするはず…通常の入浴時間をご自宅で入っていたに違いない時間に変えて。
失敗しても大丈夫!また次にアタックすればいいから。