令和4年12月14日 Cool Head but Warm Heart

スタッフブログ
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グループホームB棟 ある日の手作り弁当

 先日、グループホームB棟では調理員さんが急遽お弁当を作ってくださったそうです。

 その日、ポカポカ陽気…で皆さんお弁当を持ってお外でお昼となったそうです。

B棟リビングの窓を越えてお外でLunch
目の前には愛情たっぷりに育つ葉物野菜

❓…どうして調理員さん、お弁当を作ろうと思ったんだろう…

グループホームB棟 ある日の朝食 フレンチトースト

 スタッフは入居者様と一緒に作ったそうです。

これ、いつやってると思います?

ある日のスタッフから頂いたLINEです。

お疲れ様です。ケアプラン?          〇〇さん何を作りたいか聞いたらパンが好きとの事で話しあってフレンチトースト作ろう。ってなりました。                    明日夜勤なので夜に利用者さんと一緒に仕込みをして朝からフレンチトーストを朝食に出すっていうのはありですか?

もちろん、「あり」とお返事しました。

❕…えっ?夜勤って夜にしたの?しかも入居者さんと…

 デイたかきスタッフが作った毛糸の編み機。ベテランよしこさんが、新人三枝子さんにご指導中です。

 母ちゃんと娘…なんとも微笑ましい光景ですね。

 以前ブログで「仕掛け」のお話を書かせて頂きました。私たちは日常のなかでたくさんの仕掛けを作って行くのがお仕事であること。

 もちろん、入居者様、利用者様のhappyのため。

 しかし、そこには「優しく、温かい心」「一所懸命」だけでは足りない。

 B棟のお弁当Lunch…調理員スタッフの頭の中でどんな発想が展開されたのだろう…

 朝食のフレンチトースト、スタッフは取り組み計画に基づき行動を起こしてくれました。

 そこには「フレンチトースト、皆さんに食べてたもらおう」と言う「優しい気持ち」だけではないのです。

 母娘の編み物指導。なかなか「仕掛け」では難しいですよね~。しかし、お見事です。

 母の自信と二人のコミュニケーションのチャンスを作り出したのは紛れもなく、デイの場でありスタッフなのです。

 「冷静な頭脳と温かい心」(Cool Head but Warm Heart) という言葉はイギリスのケンブリッジ大学の経済学者アルフレッド・マーシャル (1842-1924)のことばです。

 「ケンブリッジが世界に送り出す人物は、冷静な頭脳と温かい心をもって、自分の周りの社会的苦悩に立ち向かうために、その全力の少なくとも一部を喜んで捧げよう」(伊藤宣広訳『経済学の現状』)。

 この言葉は決して経済学に限った言葉ではありません。様々な分野で引用されています。

 私たちのお仕事、福祉の世界でも同じ。

 福祉の仕事は「優しい人がする」なんて言う人もいるくらい…

 しかし、このお仕事こそ「温かい心」だけでは成り立たないと思うのです。

 20年前、相談業務について間もない頃、私はひとりのクライエントを死なせてしまった経験が有ります。

 しばらくは泣き、こんな仕事やってられない!辞めてやるー!と。

 しかし、結局辞めず今だにこの老人分野でお仕事をさせて頂いてる。

 これまで何度もこのケースを振り返る度、いかに私が未熟でただただ何とかしなければ…そんな「心」だけだった…

 冷静に解決策を考えるどころか、接触介入すら至らなかった…危機介入にも…

 客観的に見ればお手上げ状態だったんだと…

 そこに「冷静な頭脳」はありませんでした。

 そのケースのことは忘れません、どうしよう…と判断を迫られる時、頭にそのケースが甦ります。

 また、失敗するのか?と彼は聞いてきます。

 私たちが向き合う課題は多くが目に見えない、答えが見えにくい…もちろん優しさも。

 だからこそ、冷静な頭で考えねばならない。

 happyは空から降って来ません。

 地面からも湧いては来ない。

 happy、happyと連呼してもやって来ない、

 happyになる、入居者、利用者をhappyにする仕事を日々積み重ねばならない。

 そこに必要なのが「冷静な頭脳と温かい心」(Cool Head but Warm Heart)

 私たちの声掛け、提供する取り組み、ケア…

 ただ優しく、一所懸命では課題解決もhappyもえられません。

 B棟のLunch、入居者をhappyにしたいという「温かい心」と「天気いいよね。お外でLunchするといいよね。気分が変わって食欲出るかな」…と考えたかどうかはわかりませんが。結果いつもより普段食が細い方も召し上がった。

「温かい心」とどうしたら今日、入居者をhappyにできるかと自分の調理という仕事を具体化した「冷静な頭脳」が「いつもは食が細い方も食べることができた」という結果を出しました。

 フレンチトースト作りは目標実現に向けて課題計画に沿って行動する「冷静な頭脳」と入居者を喜ばせたい、朝食でhappyにしたいという「温かい心」が匂いに気付く、朝食を楽しむ、何より自分で作る喜び、自分が作ったものを皆が食べてくれた…という自信を得たに違いない…もしかしたら作ったことは忘れているかも…それでも作業をしながら「できる」喜びは脳に蓄積されたに違いない。

 母娘の編み物、ヨシコさんの母親ぶりはこれまでデイたかきで取り組んできた編み物の成果です。作品を作る中で積み重ねられた自信と楽しさ。それを誰かに伝える喜びまで得ることができた。

たくさんのフクロウ…編み物作品です。

 きっとこの取り組みを提案、提供したスタッフはここまで予測はできなかったかも…

 しかし、これは決して偶発的な産物ではなく必然的なこと。

 私たちが経験で得たものを聞かれたら誰かに教えたり、自分の楽しみを誰かに伝えることは普通…ですよね。

 私たちの仕掛けがより科学的でエビデンスがあれば結果は出るのです。

 だから、アセスメントをして一人ひとりを知る作業をします。楽しみ評価表、MMSE、趣味関心チェックシート…これまでの人生を知り、大切にしてるもの、思いを知る、これからの人生に望むことを知る。

 私たちには「加齢」「認知症」他諸々…入居者様に覆いかぶさる見えないものに立ち向かいながら、入居者様、利用者様のhappyを獲得するという使命があります。

 「冷静な頭脳と温かい心」(Cool Head but Warm Heart) を忘れず、おひとりおひとりが望む生活を実現し、happyを感じて頂けるよう日々支援をしていきたいと思うのです。

クールヘッド・ウォームハート-みえない社会をみるために(学術俯瞰講義)
コーディネータ・ナビゲータ 玄田 有史(社会科学研究所)  イギリスのケンブリッジ大学にアルフレッド・マーシャル (1842-1924) という学者がいました。マーシャルは経済学の発展に多いに貢献した人物ですが、1885年の教授就任講演での締めくくりの言葉がよく知られています。  「ケンブリッジが世界に送り出す...
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