私はもう、見ることができない。
夜勤者が恐る恐る確認すると
やはり、“それ”は、
写っていた。
少し場所を変えて。
悲鳴を上げる夜勤者。
もう、お部屋を確認しにいく勇気もない。
なんとか消すも、すぐに鳴り響くセンサー音。
私たちはもう、恐怖でどうすることも出来ず、
とっさに本日休みだった兄ちゃん職員に電話をかけた。
時刻は、日付が変わる
一歩手前。
「あのね・・・あり得ないことが事が起きてしまって、
怖くてどうにもならない。
今から来てもらえないよね・・?」
え?何?どうしたんですか!?
説明するのも、口に出すのも恐ろしかったが
説明しないと来てもらえない、こんな夜更けに。
震える声を必死に抑えながら
「あのね、カメラに
テツローさんのベッドの上に人が立ってると。
立ってるのか、天井から下がってるのか
わからない。
確認に行ったけど誰もいない。
だけど何回消しても写ってると。」
えー!!何それ!!
いやいや!俺も怖い!!
だけど、そう言いながら兄ちゃん職員
とりあえず怖いんでしょ?
じゃ今から来ますから
と、電話を切った。
兄ちゃん職員を待ってる間、
廊下の向こうの暗がりから
普段は絶対に就寝してるはずの
1番ご長寿な利用者様が
「ねえ・・ねぇ・・
ちょっとこっち来てよ
ちょっと見てほしいのよ」と
意味深に手招きされ、
怯えながら、「見てほしい」リモコン操作を2人がかりで行い
そうこうしてるうちに
兄ちゃん職員 到着。
安心感から抱きつきたい衝動を抑えながら、
残っていた“それ”を見てもらった。
「え?
これ・・・・・・
タオルか何かっしょ?」
・・・・はい?
兄ちゃん職員、確認に向かう。
そこには、ポジションバーに
かかったテツローさんの脱ぎ捨てズボンが。
・・・はいーっっ?
(つづく)