アイ子さん、長く心に刻まれた「痛い」という感覚からようやく開放され、やっと自分で行きたいところに自力で行けるようになりました。
それまでにはスタッフみなさんが根気強くお話しし、立って頂き、介助しながら声掛けながらトイレに、居室に誘導した積み重ねがあります。
決して医療やリハビリを受けたわけではなく、介護スタッフの根気、声掛け、不安感を僅かな時間でも解消しようとするケアが、ずっと車椅子だったアイ子さんの自力歩行につながりました。
アイ子さんは常に不安です。ここにおって良かとやろうか?何をすれば良かとやろうか?という不安がずっとあるのです。
きっとつらくて仕方ない。だから、ちょっとー!と常にスタッフを呼ばれます。
男性スタッフの方がより安心される事は分かりながらも、女性スタッフも諦めず、またアイ子さんの気持ちを大切にしながら何度も何度も側に行き、お話しし声掛けしながら途切れない不安が僅かな時間でも解消されるよう対応しています。
今日は女性スタッフみなさんの工夫で、いつもより長い時間、不安を感じず過ごされました。
用意された円柱状の積み木。ぐちゃぐちゃになってますが、これを「アイ子さん、これ綺麗にして下さいよー」と女性スタッフがお渡ししました。
初めはめんどくさそうでしたが、きっとアイ子さん、若い頃は几帳面でビシッとしたお仕事されてたんだろうなーと感じさせられるくらい、綺麗に並べ始められました。
まずは綺麗に横並び!
そうしているうちに昔の集中力が戻ります。頭を抱えながらも反対側に並べ替えられます。いつもの途切れない不安からちょっとの時間解き放たれました。
綺麗好きなアイ子さん、ぐちゃぐちゃは嫌いです。もっと綺麗にと今度は縦に並べられました。
女性スタッフのみなさんの工夫で、いつもより長い時間、辛い不安感が解消されて、少しはいい時間をお過ごし頂けたと思いますよ。
しかしその後はまた途切れない不安感にさいなまされます。しかしこればかりは治す方法はありません。医療の力でもどうしようもない。
でも介護スタッフのみなさんだけにはできる事があります。不安を和らげる声掛け、さりげない見守り、偽善で過剰に支援し過ぎないケア、そうして人生の先輩としてアイ子さんのこれまでに関心を持ち、今のアイ子さんの不安感を少しでも感じようとする心。
もう少しアイ子さんが不安感から解放される時間を創り出せないか、スタッフのみなさんの更なる工夫に期待したいところです。